「違和感を感じる」という表現は、日常会話で頻繁に使用されます。
ただし「感」という表現が重なっていることから、国語的に間違いであるという考え方もあるようです。
「違和感を感じる」は間違いなのでしょうか。プロの校閲者や文化庁の見解も一緒ににみていきましょう。
「違和感を感じる」という表現を「間違い」とはいえない
結論からいうと「違和感を感じる」という表現は、間違いとはいえません。
まず、文法的な観点では、「違和感」は名詞、「感じる」は動詞であり、正しい構文だといえます。
しかし「違和感を感じる」という表現で、しばしば問題視されるのは、「二重表現」ではないかということです。
「感」が連続して用いられていることにより、「二重表現」と捉えられ、間違いだとされることが多いようですが、実際はどうなのでしょうか。
まず「違和感」と「感じる」に分解し、その意味を見てみましょう。
違和感
しっくりしない感じ。また、ちぐはぐに思われること。
違和
1 からだの調子がくずれること。
2 周囲の雰囲気に合わないこと。
感じる(感ずる)
1 外からの刺激のために、感覚器官にある感覚を起こす。
2 心の中にある種の気持ちを持つ。
「違和感」は「違和」という名詞に「感」という接尾辞がついた言葉で、「違和(周囲の雰囲気に合わない、ちぐはぐ)であるような感じ・感覚」を指します。
つまり、違和感は、人間の「感覚」そのものであるとも捉えられ、「痛み」や「空腹」などの感覚を表す言葉と同類のものと捉えられる、ということです。
よって「痛みを感じる」「空腹を感じる」というように、「違和感(雰囲気に合わない感覚・ちぐはぐな感覚)を感じる」という表現は、決して間違いとはいえないでしょう。
では、間違いとはいえない「違和感を感じる」という表現、積極的に使っていいのかというと、「YES!!」と前向きにはいえない現実もあります。
この判断は、文章・言葉のプロである毎日新聞の校閲記者の中でも、見解が分かれる議論です。
校閲記者の中でも見解が分かれる
毎日新聞校閲センターの「校閲記者も迷う日本語表現」では、「違和感を感じる」という表現について記載されています。
回答
違和感はない:16.4%
話し言葉ならよいが、書き言葉だと違和感あり:42.1%
話し言葉でも書き言葉でも違和感あり:41.4%
書き言葉に関していうと、8割以上の校閲記者は「違和感あり」と答えています。
「間違い」ともいえないし、意味合いから考えても「重言」とは断定できない表現ではありますが、見解が分かれている以上「重言」と捉えられかねない表現であることは事実です。
公的な文章では、「違和感がある」などの言い換え表現を使用する方がよいでしょう。
ちなみに、文化庁・文化審議会国語分科会の「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」によると、「違和感を感じる」という表現について、冗長さを避けるという観点から「違和感がある」「違和感を覚える」とすることが推奨されています。
公的な文章であれば「違和感を感じる」という表現を避けた方が良さそう
文章のプロでも違和感があるという見解がある以上、他人に見せる文章、公式な文章では「違和感を感じる」という表現は避けた方が良さそうです。
言い換え表現としては「違和感がある」「違和感を覚える」「しっくりしない」などが挙げられます。
個人的には、「感じる」と「覚える」の意味はほとんど同じなので、「違和感を感じる」→「違和感を覚える」という形式的な言い換えは、「感」の連続を避けるというその場しのぎの言い換えにしか過ぎず、あまり好ましいとは思えません。
(もちろん、意味を持った判断であれば別ですが、、、)
他にも、
「変な感じがする」
「妙な感じがする」
「ちぐはぐである」
などの言い換え表現もありますので、この機会にボキャブラリーを蓄積してみることもおすすめです。
【まとめ】「違和感を感じる」という表現について
「違和感を感じる」という表現は「間違い」とも断言できないが、「文章のプロであれば積極的には使わない方が良い」というのが今回の結論です。
「違和感がある」とするだけで、コンパクトでスタイリッシュな印象になるので、基本的には言い換えた方が良さそうです。
とはいっても、言葉には「ニュアンス」があります。
その表現にしかないような、とても微細な伝わり方の違いがあります。
『三省堂国語辞典』編集委員の飯間浩明さんも、このようにおっしゃっています。
「違和感を感じる」は重言だと言って、機械的に「違和感を覚える」に言い換える例が多い。表現の幅を狭めている気がします。「覚える」以外にも「違和感がある」「違和感を持つ」「違和感が生じる」など多彩な表現があるし、そもそも「違和感を感じる」や「歌を歌う」だって使っていいじゃないですか。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) February 2, 2023
表現のさまざまな議論ができることも、日本語のおもしろさだと言えるのではないでしょうか。